【廻る世界で奇跡の歌を】〜3章〜







朝日がステンドグラスを通してキラキラと降り注ぐ。


それはとても幻想的な光景だったが、
何年もここに住んでいるルカにはとうに見飽きたものだった。



と、その時、教会の扉が開かれ、ガイがいつもように挨拶をし、入って来た。


「おはようルカ。今日は‥‥あれ?」


「あぁ‥‥おはよう。」



ぼんやりとした様子で返すルカに、ガイは首を傾げる。



「どうしたんだ?そんなにぼんやりして。」

「いや‥‥夢を見てさ‥‥。」

「怖い夢だったのか?」


「怖い夢じゃあない。うーん、なんつーんだろ。
 変な夢だった‥‥誰かと誰かが、話しをしてるんだけど、
 相手の顔も声も朧気で、何を話してるのか、よくわからないんだ。」


「へえ‥‥そいつはまたおかしな夢だな。」

「ま、所詮夢だけどな。で、ガイ。『今日は』って、なんだよ?」

「あぁ、今日は新しい付き人が昼頃に来る事になっているんだ。」

「なんでまた‥‥」

「俺の知り合いが働く所を探しててさ、ここなら結構給料もいいし。
 なによりも、お前の話し相手が増えるだろ?」

「だけど‥‥よくそんな物好きがいたな。」



ルカの正式な付き人はガイだけだった。

ほとんどの者が、ルカの異端さや、不思議な能力に恐れ、
ガイ以外、誰一人として名乗りをあげる者がいなかったからだ。


「あー、いや、そんなことないさ。
 お前が良いやつだって話したら、快く引き受けてくれたぜ?」


そう目を泳がしながら言うガイに訝しげな視線を送りつつ、ルカは溜め息をはいた。


「ま、どんなやつかは《気》を見ればわかるか‥‥。」



心が醜くければ
《気》も醜い


2ヶ月前の《気》の提供者にはまいった。

心を支配するのは、地位と金と女の事ばかり。

あまりの《気》のマズさにルカは失神しかけた事もある。




「大丈夫、きっとすぐに打ち解けるさ。」

ガイの根拠のないセリフに不安に思いつつも、ルカは了承した。












そして、約束の時間まで特にすることのないルカは、
ガイが持って来た本を読み、時間を潰していた。

すると、ガチャリと錠の開く音がすると、教会の扉が開き、ガイが顔を覗かせた。


「ルカ、連れて来たぜ。」


そう言ってガイは後ろにいるであろう人物に、中に入るように促す。

開かれた扉から、一人の青年が現れた。


肩より少し下くらいの、黒い髪を項より少し上のあたりで一括りしてある。
顔の左半分は隠れるような眼帯がつけてあり、右半分は長い前髪に隠れ、
その隙間から灰色の瞳がこちらを見ていた。
ガイの話しによると、傭兵をしながら旅をしていたらしく、
服装はすっきりとして、動きやすそうなものだった。


「あんたが、新しい付き人?」


ルカが問うと、その青年はルカの前で片膝をつき、灰色の瞳をルカに向けたまま答える。


「はいルカ様、私は、ライア・ローレンと申します。
 是非、ルカ様のお役にたてればと思い、この場に馳せ参じました。」


そう丁寧に言う青年にルカは少し表情を曇らせる。




「‥‥‥違う。」



「ルカ様?」


「あぁ、いや‥‥。敬語なんか使わなくていい、『様』もいらない。楽にしてくれ。」

「しかし‥‥」

「いいって。それに、これからお世話になるんだし。」


そう言うと、ライアは立上がり、畏まった態度を和らげる。


「ああ、では改めて宜しく。‥‥‥ルカ。」

「おう、宜しくな、ライア。」


そう言って二人笑いあう。


しかし、ライアがルカの名を呼んだ瞬間に、
彼の瞳が僅かに揺らめいたに、ルカは気付かなかった。



「そうだ、ライア。早速だが、ルカに《気》を与えてやってくれないか?」


そう、すぐに打ち解けそうな雰囲気の二人を微笑ましそうに見ていたガイが、ふと提案する。


「ガイ、いきなりそんな‥‥」


「もしかしたら《気》があうかもしれないだろ?
 それにお前、昨日、力を使ったからまだ体調が万全じゃないだろう?」


「でも‥‥」


「俺は別に構わない。‥‥だが、力と言うのは‥‥?」


いまいち話しの見えない様子のライアはガイに問う。


「あぁ、ルカには癒しの力があるんだ。」


「ガイっ!?」


そう言うガイにルカが慌てたように止める。

大丈夫さ、とガイは呑気に言うが、
ルカはこの世の終わりみたいな情けない顔をしてライアを恐る恐る伺う。





絶対気味悪がられる‥‥!

せっかく仲良くできそうだったのに‥‥。





だが、ライアの反応はルカの想像していたものとは全然違うものだった。




「ほう‥‥癒しの力とはまた珍しい‥‥。」




「‥‥へ?‥‥そ、それだけ‥‥?」

「ん?どうした?」

「気味悪がらないのか‥‥?」

「何故だ?とても便利ではないか。」


そう言うライアの言葉にルカはうっかり泣き出しそうになってしまうが、
込み上げて来る熱いものを何とか抑制した。


「そっか‥‥ありがとう。」

「何故礼をいう?」

「あー、と、ルカのこの力はな、他の人から見たら、ちょっと驚くものだから‥‥」


あえて遠回しに言うガイの言葉に、ライアは理解する。


「他のやつらなんか気にするな。
 お前にしか出来ないのなら、それは凄い事だと俺は思うぞ?」


「ライア‥‥うん、そうだな!」


笑顔を取り戻したルカにライアも少し笑ったように見えた。
眼帯と前髪のおかげでほとんど表情はわからなかったが。



「では、《気》を与えるのにはどうしたらいいんだ?」

「あ、俺の原石‥‥この石に手を翳してくれるか?そしたらコッチで勝手に《気》を貰うから。」

「わかった。」


ライアはルカの胸の原石に手を翳す。

ルカは目を閉じ、深く一呼吸した。



ライアの手から《気》が光となってルカの原石に吸い込まれる。




「っ‥‥‥はっ‥ぁ‥?!」




《気》が原石に送り込まれた瞬間、ルカは胸の原石に手を当て、蹲った。


「ルカ!?」

「お、俺の《気》はそんなにマズかったのか?」


慌てて駆け寄るガイと、少しショックをうけているライアにルカはかぶりを振る。


「ち‥‥がうっ‥‥!」


「ルカ?」



「《気》が‥‥力が、みなぎってくる‥‥!重かった体が・・・、一気に軽くなった。」



ルカの言葉に二人は驚く。

では、これは‥‥





「ライアが、俺のパートナーなんだ‥‥。」





* * * * * * * * * * * *

あとがき

新しい登場人物ライアさん登場!
黒髪灰眼のナイスガイ☆(笑)
しかもイキナリおいしい位置に・・・!!
アッシュ!立場が危ういぞ!(お前が書いてるんだろ)

アッシュが中々出てきませんね・・・;;
次か次の次くらいに名前だけ・・・出せるといい・・・な(名前だけかよ!)

いやいや、一応アシュルク小説ですから。
見えませんがね・・・;;orz


にしても、話しの展開早いなぁー・・・




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