【廻る世界で奇跡の歌を】〜5章〜








ライアが来てから、そしてパートナーになってから、ルカは瞬く間に元気になっていった。

血色も良くなり、体力も徐々についてきた。

ここへ来る前は傭兵として旅をしていたというライアに、剣を習えるようにまでなったぐらいだ。

以前、趣味で少しだけ剣を習っていたルカだが、
段々と体力がなくなっていき、やむを得ずやめてしまっていたのだ。





「ふっ、はぁっ!」


カンッ、カン!


「まだ踏み込みが甘いぞ。」



風を切り、ビュン、と唸る木刀。

ルカは踏み込み、木刀を横に凪いだ。



「はぁぁっ!」


びゅおっ!


「右が隙だらけだぞ。」


「!?」


そうライアに言われ、ルカはハッとして右側に意識をそらす。



「ホラ、そこ。」

「あっ」


すると凪いだ木刀に、ライアの木刀がひっかけられ、軽々と弾き飛ばされた。



「隙があったと言うのは嘘だ。だが、俺のかけた言葉で本当に隙ができた。
 相手の言葉を信じ過ぎるのもどうかと思うぞ。」


「ずっりぃー!!」


そう言って頬を膨らませ、拗ねるルカにライアは苦笑する。


「悪かった、だが、太刀筋はいいぞ。随分と上達したな。」

「へへっ、ライアのおかげだぜ。」


褒められて嬉しそうに笑うルカに、ライアもつられて口角をつりあげる。

その光景を見ていたガイもまた、微笑ましいものを見ているように目を細める。
ルカの元気な姿が見れて、友として、また、育ての親として、嬉しいのだ。



ライアが来てからの毎日は、ルカにとってとても楽しいものだった。



しかし、そう楽しい事ばかり続くはずはなかった。










「ルカ様っ!」


一人の兵士がバタバタと忙しなく駆け込んで来た。


アルドだ。



「どうしたアルド?そんなに急いで。」

「これっ!これを見て下さい!」


アルドがそう言って文字がびっしり書かれた数枚の書類を差し出した。


「なに、これ?」


本を呼んだりするが、こういう難しそうなものは少々苦手なルカは、
あまりの文字の多さに顔をしかめる。


「余計なお世話だとお思いになられるかもしれませんが、
 自分は、旦那様のルカ様に対する対応をあまりよく思っておりません!
 それでどうにかして変えさせようと、旦那様の部屋に忍び込んで色々と調べていたのです。」


アルドの爆弾発言にルカ達は驚くが、話の先を促す。



「それで、この書類を見つけたのですが‥‥ここ、この行を見てください。」



アルドにそう言われ、ルカはその箇所に目を走らせる。
横からガイとライアも覗きこんだ。


「どれどれ‥‥‥」












xxxx年xx月xx日

キムラスカ国より《聖なる焔の光》と《聖なる焔の影》を捕獲。
しかし護送中に原因不明の事故発生。
その際に二人は逃亡を計るが、
《聖なる焔の光》は再び捕獲成功する。
《聖なる焔の影》は崖下へと落下。
その後捜査を続けるが、遺体は見つからず。
生存不明。



xxxx年xx月xx日

《聖なる焔の光》を教会へ幽閉。

記憶の退行が見られるが、
他、損傷などないので特に問題なし。

名前を《ルカ》とする。

《聖なる焔の影》を逃したのは少々痛手だが、
本来の目的である《聖なる焔の光》を捕獲したので、
今回の計画は成功とする。



「こ、れ‥‥?!」



書かれている内容に驚きを隠せないルカは、側にいたライアの袖をギュッと掴む。


ライアはそれを一瞥するが、何も言わず、再び書類に目を通す。


「ルカ様は、誘拐されてきたんです!」


「何となく‥‥アイツらの本当の子供じゃないって、思ってたけど、
 まさか本当に誘拐されてたなんて‥‥。」

ルカは唖然と呟く。

するとガイがライアに向かって真剣な面持ちで言う。


「ライア、もう話していいんじゃないか?」

「‥‥‥。」


「ガイ?なんだよ、話しって。‥‥まだ、何かあるのか?」


話しがわからず首を傾げるルカ。

すると、先程からずっと黙りこくっていたライアが漸く口を開いた。



「‥‥‥ルカ。」


「な、なんだよライア。」


「今の話しを聞いている限り、大体がわかっただろうが、
 お前はダアトに誘拐されたんだ。」


「‥‥!‥‥うん。」






「お前はキムラスカ王国のファブレ家が子息、

 『ルーク・フォン・ファブレ』

 キムラスカの《聖なる焔の光》だ。」






「公爵‥‥子息‥‥ルー、ク‥‥」





クラリ、と眩暈に似た感覚がルカを襲う。


「ルカ‥‥、続きは、明日にするか?」


それを察したライアが気遣うように問い掛けるが、ルカは頭を振った。


「いや、・・・・続けてくれ。」


「しかし‥‥!」


ガイは止めようとするが、ルカは聞かず、ライアに先を促した。


真実を素直に受け止めようとする瞳を見て、ライアは短く嘆息し、続きを話す。



「‥‥無理はするなよ。

 ‥‥7年前、お前とお前の双子の兄《聖なる焔の影》‥‥アッシュは何者かにさらわれたんだ。」



「アッシュ‥‥」


何処か口に馴染んだ気がする名前を呟く。

記憶はまだ戻らないけれど、霞みがかったものが少し晴れた気がした。



「だが護送中に何らかの事故が起きて、
 兄のアッシュは崖下へと落下したんだ。今も居場所どころか生死すら不明の状態だ・・・・・・」



生死不明。


生きているのか死んでいるのかもわからない。

頭の中が真っ白になりかける。


だが、それはライアの続けて言われた言葉によって阻止された。



「‥‥が、世間的にはそう言うことになっている。」


「え‥‥世間、的?」


「お前の兄、アッシュは生きているぞ。」


「‥‥!!」



覚えていない、筈なのに、

涙が溢れだす。


「ルカ?!」


あぁ、ガイが慌てている。
ライアも少し驚いてるみたいだ。


大丈夫、悲しくて泣いているんじゃないんだ。

なんていうか、自分でもよくわからない。
ただ、胸が苦しくて、勝手に涙があふれ出るんだ。
でも、これは喜びと安堵だと何となくわかった。


身体は、覚えていたんだな。



「ルカ‥‥俺は、お前の兄であるアッシュに頼まれて、お前を助けに来たんだ。」


「アッシュ、に?」


「そうだ、アッシュは今では公には出来ない存在。だから、動けないアッシュの代わりに俺が来た。」

ガイの協力を得てな。とライアが言う


「ガイの‥‥?」

ガイの方を見れば、いつもの人好きのいい笑顔でウインクされた。


「アッシュはお前をとても心配していた。自ら助けに行こうと最後まで渋っていたぞ。」

その時の事を思い出したのか、ガイが深い溜め息をついた。

ライアはそれを一瞥し、再びルカに視線を戻しその朱毛をフワリと撫でる。


「‥‥駄目、だ。思い出せない‥‥」

ルカは顔を歪めて俯く。


「無理はするな。お前はお前だ。たとえ記憶が無くともな。」

「ん‥‥ありがとう、ライア‥‥。」


「いや、‥‥少し顔色が悪いな。続きは明日にしてもう休め。」

「でも‥‥」

「ル〜カ〜、無理は禁物だぜ?」

「ガイ‥‥わかったよ。」


ルカは渋々とだが頷く。

するとガイは、先程からずっと様子を見守っていたアルドに向く。


「アルド、この事は‥‥」

「はい、もちろん他言するつもりはありません。」


墓にまで誰にも言わず持って行きます!と意気込むアルドに、ルカは表情をやわらげる。


「アルド、ありがとう。」


ルカが微笑み、アルドに感謝の言葉をのべると、アルドの顔がほんのり赤く染まった。


「い、いえっ!‥‥ルカ様が早くこの教会から開放されるよう、お祈りします。」


「任せとけ、今はまだ準備段階だが、必ずここから助けだしてやるからな。」

ガイの言葉にライアも頷く。


ルカも皆の言葉を信じ、自分も出来る事があれば頑張ろうと思った。





* * * * * * * * * * * 

ルークの名前がやっと出てきた・・・。
やっとアシュルク(?)といえる・・・!
アシュルカってなんか変だし・・・(そこかよ)











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