【廻る世界で奇跡の歌を】〜6章〜
「ルカ様、旦那様がお呼びです。」
早朝に、まだ空が薄暗い頃に、突然起こされた。
ルカはわけがわからないまま、とりあえず寝間着を着替え、
アルドではない兵士の後をついて行った。
「どういう風の吹き回しだ‥‥?」
極力自分と関わらないようにしてきた、
形式上、『父親』がいきなり自分を呼び出したのだ。
しかも早朝に。
「旦那様、連れて参りました。」
兵士がそう言い、コンコンとノックすると、
中から少し嗄れた声が聞こえてきた。
「入れ。」
豪奢な作りの扉を開けた向こうに、
自分と全く似ていない中年太りの男が現れた。
身に纏う聖衣も、文様が僅かに横に伸びている。
コイツが偽の親だってのはわかっている。
もしかしたら、自分が真実を知った事をバレてしまったのかと、ルカは警戒した。
すると男は両手を大きくひろげ、にんまりと気持ちの悪い笑みを浮かべ喋りだす。
「おぉルカや、喜べ、お前に大変名誉な任務を与えられたぞ!」
「任務‥‥?」
訝しげに聞き返すルカに、男は大袈裟に話しだす。
「そうだ、お前のその癒しの力で、先日大規模な事故があったと言う鉱山まで赴き、
怪我人の治療をするよう、城の大臣から直々に頼まれたのだ!」
有無を言わさせず、ペラペラと喋り出す男にルカは辟易する。
「はぁ‥‥。」
あの眼は、きっと何か裏がある。
(どうしよう‥‥、ライアやガイに相談した方がいいよな‥‥)
「さぁ、行くぞルカ!」
「へ?」
「何をボサッとしておる。馬車の準備はもうできているぞ!」
「い、今から行くのか!?」
「善は急げと言うだろう、いいからさっさとこい!」
男は、先程の気持ち悪い笑みを引っ込めて、細い目を吊り上げる。
ルカは兵士達に半ば引きずられるようにして馬車に乗せられた。
(どうしよう‥‥ライア達はこの事知ってるのかな?)
しかしまだ夜も開け切らない早朝だ。
まだ眠っている可能性のほうが高い。
そうルカが悩んでいる間にも馬車は鉱山《アクゼリュス》へと向かっていった。
ライアは今日もルカに稽古をつけるべく、二本の木刀を持って教会へと入った。
後ろから続き、ガイも入る。
「ルカ、朝だぞ。」
ルカの寝室を数回ノックし、返事を待たずして中へ入る。
いつもは、まだ布団の中で幸せそうに寝ているのだが、
今日は何故かベッドにはルカの姿がなかった。
「ルカ‥‥?」
「一体何処に‥‥?」
ライアが、まだルカの寝ていた形跡の残るベッドに手をやる。
まだ僅かにぬくもりが残っているそれは、ルカが起きて間もない事を物語っていた。
ガイも既に行動していて、近くの兵士へとルカの行方を問うていた。
聞き出し、血相を変えて戻ってくるガイにライアは眉を潜める。
「ルカは司教の使いとして、《アクゼリュス》へ向かったらしい‥‥!」
「《アクゼリュス》‥‥だと‥?!」
「あぁ、怪我人などを救助するのにルカの力が必要だとか。」
「くっ、よくもそんなデタラメを‥‥!」
「しかし、早すぎないか?予定ではあと半年ほどあったぞ。」
「あぁ‥‥だが、奴等が動いたとなれば、早急に動かねば‥‥!」
「あぁ!」
そう言い、ライアとガイはルカを追うために駆けて行った。
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はいはいきましたよー。
にしてもほんとアッシュ出てこないな・・・;orz