※ちょっと暴力的なシーンがあるかも･･･







青年は馬に乗って風のように駆けていた。

周りの音、蹄が地を叩く音すらも聞こえないほど、
青年の気は別の所へと向いていた。





はやく  はやく





間に合え‥‥！














「ルーク‥‥！」














【廻る世界で奇跡の歌を】〜８章〜



















「何だよ‥‥！障気って！」

テフラとの回線も切れてしまい、
聞き慣れない単語にルカは少々混乱する。



「障気とは、空気が侵された毒気のある空気‥‥
　この霧のようなものがそれです。」


淡々と説明する指揮官


「で、俺にどうしろってんだ。」


「ですから、貴方の《癒しの力》でこの障気を消して頂こうかと‥‥。」


「俺の力で障気を消せるのか？」


「おそらく。」


「‥‥･･････････････それならそうと早く言え。」






それだけ言って、ルカは兵士の腕を振り払い、
両手を前に翳し、目を閉じる。


気が徐々に高められていく。



「うまくいくか、わかんねぇけど‥‥」



ルカの口から自然と《歌》が紡がれる。

聞いたことのない旋律だが、
何処か懐かしさを感じるものだった。


ルカの手から発せられる、眩い光が障気を照らしていく。



光に触れ、徐々に障気が薄れていく。


だが、ふいにルカの歌が途切れた。
ルカは肩で息をしていた。



「はぁっ‥‥こんなに、力、使うの‥‥初めてだから‥‥」


そう言ってルカは膝を着く。


「ごめん、少し、休ませてくれ‥‥」



「‥‥そうですか。仕方がありません。では‥‥‥」



休憩させてもらえると思い、ルカはホッと息をつく。



だが、男から言われた事は、少し休めなどという優しい答えではなかった。





「無理やりにでも、覚醒してもらいます。」

「え‥‥？」



ルカは再び拘束され、岩の壁に押しつけられる。



「我々には時間がありません。覚醒したら、それ以上の力が使えるでしょう。」




男はそう言うと、他の兵士に先に宝石らしきものが埋め込まれている杭と、
たがねのようなものを持ってこさせた。

そしてたがねをルカの原石にあてがう。



「な、何を…する、気だ…」


声が、身体が震える。
拘束する手をつっぱねようとするが、力が抜けてできない。



「言いましたでしょう。無理にでも覚醒させて頂くと。
　原石を、この譜術の込められた杭で削るんですよ。」








男はそう言って鎚をふり降ろした。











―ガキィィン！！！








「っ、ぁぁあああああ！！！」








衝撃が、一気にルカの全身を貫く。









ガンッ！ギィンッ！！


「ぐ、あ！！がっ！」


次々と襲いくる衝撃に、ルカは失神しかける。

だが、絶え間なく打ち続けられ、痛みに意識が引っ張られ、
気絶することができなかった。



ガンッ！


「っ、…ぁ…」

石が削れ、中から原石とは違う色が僅かに覗いた。



「…もう少し…ですね。」

男はさらに力を込め、思いっきり鎚をふり降ろした。




ガキィィンッッ！！




「あぁあああああっ！！！」



ルカが身体をビクンとのけ反らせる。

喉が引き絞られそうな絶叫をあげた時、ルカの身体が淡く発光しだした。
光は段々と強いものになっていく。


「おぉ、ようやく…！」

それを見た男は歓喜の声を上げる





ルカの《気》にあてられ、急速に障気が霧散していく。



「これが再生の力････！･･･っ！？」


ルカの《気》に、障気だけでなく、足場も崩れていく。




「もういい！やめろ！」

男はルカに向かって手をのばす。



すると男は、ルカの《気》に触れ、跡形もなく霧散した。









「ぁ…、あぁ、あ…！」



溢れ来る力を制御できず、
虚ろな眼で呆然と立ち尽くすルカ。





―怖い



―俺はどうなっちまうんだ････？




―助けて


―誰か




―ライア


―ガイ



―テフラ


　　
――『　　　　』





え･･･？『　　　　』って誰、だ････？










やがて、ルカの足場も崩れ、ルカ自身も落下しようとしていた。






「ルーク！」





差し出された手を掴んだのは無意識だった。




手が繋がれた瞬間、何かが弾けた気がした。






あぁ‥‥そうだったんだ‥‥‥







俺は‥‥‥








＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊

相変わらず話が飛びすぎ。
本当はもうちょっとルカを痛めつけようかと思ってたのですが、
あまりにも痛いといけないと思ったので辞めました。
あっは☆このＳっ子め！