―――雨の日の記憶5―――












七年前、父上の受け持つ会社の視察に行くために、俺たちはカイツール近くにある別荘へと来ていた。



いずれ俺達は父上のを跡を継いで、キムラスカで働くだろうから、視察は早い方がいいとの事だった。





しかし、行く前にルークが体調を崩した。


・・・・・・ルークは昔から体が弱くて、よく熱を出して寝込んでいた。


しかもその日は生憎と雨だった。


急激に気温が下がったから体調を崩したのだろう。


だからルークは留守番にさせて、俺だけが父上についていく事になったんだ。









会社へと行く途中の車内で、弟の容態の心配をしつつも、父の仕事場への興味を持っていた。



ふいに、頭に電流を通されたような痛みが走った。













『―――っ!?』









これは・・・・・・!?











『車を止めてくれ!!』





『アッシュ!?』





俺は父上の制止も聞かないままに車を飛び出した。













あの頭痛は只の頭痛じゃない!










弟に――――






―――――ルークに何かあった!?













雨に濡れるのも構わず走った。







行き先はルークが伏せっているはずの別荘じゃない。







何故かは知らないが、そう思った。







行き先は・・・―――チーグルの森。


















「片方に異変があればもう片方に双子に伝わる・・・・
よくあるケースですね。それが何故なのかは未だに解明されていませんが、
双子には他にない強い繋がりがある。それも一卵性双生児ともなれば・・・・・・
もっとも・・・・・・、彼らのは少し特殊なようですが。」



「そうか・・・・・それで、ルークは?」



「あぁ、予想したとおりチーグルの森にいた。」
















俺は森に入りルークを捜した。


そして森の最深部にてモースと、その腕に抱かれてぐったりしているルークを見つけた。













「 !? モースって、あの行方不明になった凶悪組織オラクルの・・・・・」


「あぁ、そのモースだ。やつは元々キムラスカの社員で父上の部下だったんだ。
だが不正な行為を働いて会社をクビにされたんだ。」


「金目的であれ、恨みであれ、大企業の偉人の息子を人質に・・・よくあるパターンですね。」
















ルークは俺の姿を見つけると暴れて泣き叫びだした。

それまでにも抵抗したのだろう、腕や足には殴られたような痣や傷があった。





『モース!!ルークを離せ!!!』



『お前はアッシュ・・・!?何故ここが・・・・・・!!』



『いいからルークを離せ!!!』



『近づくな!!』



『!!』



『こいつがどうなってもいいのか!!?』




モースのはルークを後ろの崖の方へと追いやった。

しかも手にはナイフが握られている。



『っぐ・・・・・!』



『兄さん!アッシュ兄さん!!怖いよぅ!!』



『ルークっ・・・・!!』



『こうなったらお前も人質になってもらおう・・・・・こっちへとゆっくりくるんだ。
変な真似はするなよ、お前の大切な弟がどうなっても知らんからな。』



『ぁ・・・・兄さんを・・・俺達をどうするつもりだ!?』



『ククク、なぁに、ちょいと見せしめに・・・・・・な。』



モースの言葉を聞いたルークは渾身の力を込めてモースの腕を跳ね除けようとした。



『っ・・・・・!!アッシュ兄さん!来ちゃ駄目だ!!』



『えぇいうるさい!大人しくするんだ!!!』



そうするとモースはルークの腹を一度蹴った。



『っぐ・・ぅ・・・!』



ルークは腹に来た衝撃で押し黙ってしまった。

体調も崩しているためか、雨に打たれている顔は青白い。



『ルーク!!モース!今そっちに行くからルークに手を出すな!!』



『ふん・・・兄のほうが物分りがいいようだな。』





一歩一歩ゆっくりとモースに近づく。


父上が捜索隊を出して俺の後を追わせているはずだ。


しばらくすれば助けが来る。


それまではルークの身も考え大人しく捕まっているつもりだった。

















だがモースの元まであと数歩という時に












「雨で・・・モース達が立っていた場所の地盤が、崩れたんだ。」
















ガイが息を飲むのがわかった。


ジェイドも目を僅かに細めた。












モースとその腕に捕らえられていたルーク。














二人は、崖から落ちた。















『!?な、なんだ!!!?』




『ぁ・・・・・?』





『 !? ルー・・・・・っ』











伸ばした手は僅かに届かず。













『――ぁ―――しゅ―――――』






『っ!!!!!』








何が起きたか判らないような、驚愕の色を翡翠の瞳に涙と共に滲ませて。











『ルーーーークーーーーーーー!!!!!!!!!』












ルークはモースと共に崖の底へと吸い込まれていった。
















後を追おうとしたが、後から来た父上の捜索隊に拒まれてできなかった。




『アッシュ様!いけません!!!』




『っはなせっ!!ルークがっ!ルークが・・・!!!』




『・・・・っすみません!アッシュ様・・・!』





どすっ






『ぐ・・・・?!』




暴れた俺は捜索隊の一人に当て身を食らわされ、気絶させたれた。







俺が目覚めた時にはあれから1日が経過していて、未だルークの所存はつかめていなかった。




何日も、何ヶ月もルークの行方を捜し続けた






母はショックで病に倒れ、自他共に厳しい父でさえも仕事にあまり身が入らなかった。











『ファブレ公爵様・・・・・・・。』






『今日も見つからなかった・・・・か・・・・・・。』





ルークは、遺体すらも発見されなかった。

それはもちろんモースも同じことで。








『申し訳御座いませんっ!!明日も捜索を続けますので・・・!!!』








『・・・・・・・もう、よい。』







『父上!?なにを!!』







『これ以上他の者に迷惑をかけるわけにもいかん。』







『公爵様!私どもは迷惑などと思っておりません!!そんな気をつかわれなくても・・・・!!』







『捜索は打ち切りだ。・・・・・・命令だ。』



苦虫を噛み潰した顔で父はそう命令を下した。








『・・・・・っ!!』







『わかり・・・・ました・・・・・・・。』






結局ルークの所存は掴めぬまま、捜索は打ち切られた。












「何故、捜索を・・・・・それに、他にも手配すれば・・・・」



ガイが信じられないという風に呟いた



「モースは元キムラスカの社員です。この事が公に知られればファブレ家はもちろん、
ファブレ公爵が勤めているキムラスカまでもが印象が悪くなる可能性もあります。
自分の一人の息子のためにキムラスカの印象を悪くするわけにもいかないと、思ったのでしょう。
・・・・・酷なことですが、上に立つ者として、懸命な判断です。」





「捜索は打ち切られた。だが、何人かの者は暇を見つけてはルークの行方を捜し続けた。
しかし、何年か立つにつれ、いつしかルークを捜す者はいなくなった。」





「貴方を除いては・・・・・でしょう?」





アッシュはチラリとジェイドを一瞥する。




「・・・・・・・・・」






沈黙は肯定の証だった









アッシュは一人でずっとルークを捜し続けた。

暇がなくとも、無理に暇を作り、自分の力のすべてを使い捜し続けた。







誰もが諦めたルークの生存を



アッシュだけは信じ続けていた






















「・・・・・・・・・そんな事はもうどうでもいい・・・・・・・・・」







やっと見つけた






「ルークは、ここにいる」







俺の半身

























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あとがきんちょ(らくが●んちょ風に)


ぎゃっふんごばばばば(謎語)
さんざん更新遅くてこれかよ!みたいな。
とにかく・・・・過去編UPです・・・・
モースは悪いおいちゃん(笑)

次あたりはルーク目覚めないかなー?
書いてる自分でもわかりましぇん(コラ)


まだ続きます・・・・







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