遠い、遠い日の記憶は最近思い出されたばかりで・・・・・・。

それでもそれは色褪せる事がなくて――――。









―――遠い日の記憶3―――












駅から出て、歩いて行けない距離でもないがどうするか、
とアッシュに聞かれ、ルークは歩いて行く事を望んだ。


少しでも早く両親に会いたかったが、久しぶりに戻ってきた故郷を少し歩いて見たかったのだ。


歩いて行くうちに、見覚えのある箇所が多くなって行くのに思わず笑みがこぼれた。

さすがに7年も経っているので、多少は面変わりしてしまった所もあったが、
昔からこの風景を大事にしてきた街だったので、変わっていない場所も数多くあった。







「着いたぞ。此処がファブレ家の屋敷・・・・俺達の家だ。」

アッシュが立ちどまり、大きな屋敷を指す。


豪華、と言うほどではなく、シンプルな造りだったが、他の家よりもとても大きかった。


「久しぶりだ・・・・」


そう呟くルークを横目に、アッシュは門の横に取り付けてあるインターホンのボタンを押した。


『はい、どちら様でしょう。』


すると直ぐに使用人らしき女性の声が小さなスピーカーから聞こえた。

「俺だ、門を開け。」

埋め込まれている小型カメラでアッシュの姿を確認したのか、直ぐに対応の声が帰ってきた。


『これはアッシュ様、お帰りなさいませ。今すぐに門を開けさせます・・・・・』


そう言ってしばらくもしないうちに門が自動的に開き、玄関までの道が開かれた。

玄関の分厚い扉が使用人二人によって開かれる。

足を踏み入れると、両側に並んだメイド達が次々にお辞儀をして出迎えた。


「お帰りなさいませ」

「お帰りなさいませ」


ルークは昔と変わらないこの仰々しい出迎えに、懐かしさを感じつつも苦笑いした。


すると奥の方から一人の中年男性が出てきた。



「これはアッシュ様、お帰りなさいませ。」

深く礼をする男性は、ラムダスという執事だった。


「お電話を下されば直ぐにでも向かえの車を寄越しましたのに・・・・おや?
 そちらはご友人ですか・・・・?」


アッシュの後ろにいる俺達をチラリと見る。


するとラムダスの細い目が少し見開かれた。



「あ、アッシュ様・・・・この御方はもしや・・・!」


「あぁ、ルークだ。」


未だこちらを凝視する執事に微笑みながら挨拶をかける。

「ラムダス、久しぶり。」


久々に見るファブレ家の有能な執事は、
7年経った今でもキチンと身なりを整えていて、昔と変わらなかった。


「おぉ・・・・!ルーク様、よくぞご無事で・・・・・!!」


そう言うと、ラムダスはいつもの無表情を僅かに崩し、
ルークの手をとり、深く頭を垂れた。





「ラムダス、父上は今日は休みだろう?こいつを合わせたいのだが。」


「はい、旦那様は今日は休暇で御座います。
 今は奥様の元におられるかと。・・・・お二人とも喜ばれますよ。」


それを聞いたガイが言った。


「じゃあ、二人で会ってこいよ。俺はここで待ってるからさ。
 家族水入らずでゆっくり話して来いよ。」


「ああ。ガイ、ありがとう!」


「気にすんなって☆」


そう言ってガイと別れた後、アッシュとルークはファブレ夫妻の私室へと向かった。


行く先々で驚く使用人達に軽く挨拶をしつつ、歩みを進めると、
廊下の奥にファブレ夫妻の私室の扉が見えた。



途端、ルークの足が緊張して震えだす。





―――父上達は俺の事、覚えていてくれるだろうか?―――





そんなマイナス思考が湧き出す。

自分は行方不明になって7年も経っているのだ。
しかも捜査は打ち切られた。
それは勘当ともいえる事だった。


無意識のうちに、横にいるアッシュの服の袖をきゅっと摘む。
すると、ルークの不安を察したアッシュがルークの手をそっと握った。

それがまるで『心配するな』と言っているようだった。

言葉で話さずとも解る。

手のぬくもりに安心したルークは、緊張で強張った体の力が少しずつ抜けていくのを感じた。



コンコン、とアッシュが軽くノックをする。


「誰かね?」


威厳のある低い声が返ってきた。


「父上、アッシュです。ただ今戻りました。」


すると今度は女性の優しい声が返ってきた。


「まぁ、アッシュ、どうぞお入りなさい。」



キィ・・・・と、アッシュの手によって、微かな音をたてて扉が開かれる。





部屋に入ると、一人の女性がベッドに横たわり、
それに寄り添うように、近くの椅子に一人の男性が腰掛けていた。



父と母だ


「あ・・・・・」


会えた喜びに目の奥が熱くなり、鼻の奥がツン、とするのを感じた。





久々に見た母はやせ細っていた。
自分が成長したのもあるが、少し、小さくも見える。

父もすこし痩せたみたいだった。




「!?・・・・・・・・お前は・・・・!」

驚嘆を隠さずに、ファブレ公爵は立ち上がる。


「あ、あの・・・」

ルークはもつれそうになる己の舌を叱咤しつつ、一生懸命に言葉を紡いだ。







「俺・・・ルーク、です。・・・・父上、母上・・・・。」








「おぉ・・・おぉ・・・・!・・・・ルーク!」

「ルーク、ルークですって?」


夫の感激の声を聞いた妻・・・シュザンヌがのそりと起き上がる。
ルークは慌てて母の元へ向かい、起き上がるのを手助けしてやった。

「あぁ!ルーク、ルークなのですね・・・・!顔をもっとよくみせてちょうだい・・・!」

すると、細い指に優しく頬を包まれた。

「ははうえ・・・」

懐かしい匂いとぬくもりに視界がじわりとぼやける。


「良くぞ、戻ってきてくれた。」


「ずっと、貴方の無事を祈ってました・・・!」


そう両親に言われ、抱きしめられる。

チラリと兄の方を伺うと、アッシュは口端を少し吊り上げて頷いた。



それを見て、ルークの目からついに涙が零れ落ちた。









「父上、母上・・・・・・・・!


         ・・・・・・・・ただ今、戻りましたっ・・・・・・・・!」












*******************
あとがき(なんだよきっと・・・)


「とおきお3」でござい・・・
途中でガイが書き辛くなったので、
ラムダスのトコに置いていきました・・・・(酷)
ラムダスとお茶飲んでたらいいよ・・・うん。

次話で終わる予定です。


・・・・・多分。

否、きっと終わるはずさ・・・(ぶつぶつ)















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