―優しい人―
「ルーク!」
バンッと止め具が弾きかねないほど乱雑に扉が開かれた。
全速力で走って来たのだろう、いつも後ろになで付けている髪は下に降りていた。
「ルークは!?」
切羽詰まったように問うアッシュをジェイドが宥める。
「落ち着いて下さい。今は安定してますが、油断出来ない状態です。」
視線を辿れば、白いシーツに埋もれる、朱。
それを取り囲むように、医療用の音機関が規則的な音を発している。
ルークをじっと見守っていたガイが、口を開く。
「アクゼリュス崩落の事で、集団に襲われたらしい。」
「私達は急いで駆け付けたのですが…」
「できる限り回復術は駆けて見たのだけど…。」
そう言ってナタリアとティアは瞳を伏せる。
「ルーク…お願い、イオン様…!」
ぎゅっと手を組み、アニスは今は亡き、あの心優しい少年に祈る。
「ルーク…」
アッシュがベッドの側へと行く。
覗き込めば、苦しげな表情が伺えた。
呼吸も浅く荒く、額には脂汗が浮かんでいる。
そして、庇うようにお腹に手が添えられていた。
「ルーク・・・・・・」
アッシュはルークの片手を取り、祈るように額に押しつけた。
暗い…ここは…?
気付けばルークは暗闇の中に立っていた。
どこが上でどこが下かもわからないほど、そこは暗かった。
ふいに暗闇の中に光が灯る。
「あ・・・」
小さな子供が二人、きゃっきゃと笑っている。
しかし、段々と暗闇の奥へ走っていってしまう。
勘が告げる。
その先へ行ってはいけないと。
「待って!そっちへ行っちゃだめだ!」
しかしルークの声が聞こえていないのか、二人の子供はどんどん進んでしまう。
ルークは慌てて追いかけた。
「ぅ…!はぁ、あ、ぁ!…赤ちゃ…が…!!」
不意に呼吸が荒々しくなり、唸りだしたルークに比例するように、
音機関から発せられる音も、不規則なものになりはじめる。
「いけませんっ!脈が弱まってきています!このままでは母子共に危険です…!」
医者の焦ったような声に、仲間達は顔を引きつらせる。
「ルーク…!」
うなされながら、お腹にいる命に叫び続ける。
そんなルークに、何もしてやれない仲間達は、悔しさに歯を噛み締めた。
「待って、そっちに行くなっ…!」
追いかけ、呼ぶが、子供達はどんどん奥へ進んでしまう。
走るのに疲れ、ルークは遂に足を止めようとした。
その時、子供達のいる、さらに奥に、光が灯るのが見えた。
「あれは・・・?」
淡い光の中に、人影が見える。
その人物は、子供を呼び止め、ルークの方を指差した。
子供達は漸くルークに気付き、嬉しそうにこちらに駆け寄ってくる。
ルークの腰にしがみつくと、光になり、お腹に吸い込まれるように消えた。
熱い鼓動にルークは安堵する。
そしてルークは人影の方へ向き直った。
光の中で、その人物は優しく微笑んでいた。
《もう大丈夫ですよ。》
優しい声に、ルークは安堵し頷く。
《さあ、貴女も戻らないと。ここにくるのはまだ早いですよ?》
「でも・・・どうやったら帰れるかわからないんだ。
それに、とても疲れたんだ・・・・。」
困ったように言うと、その人物は笑みを崩さず言葉を続けた。
《大丈夫です。僕が貴女の背を押してあげます。
帰り道は、ほら、貴方を呼ぶ声が聞こえるでしょう?》
耳をすませば、自分を必死に呼ぶ声が聞こえた。
(頑張れルーク!)
いつも自分を気にかけてくれた、心からの親友。
(眼をお覚ましになって!ルーク!)
いつも不甲斐ない自分を叱ってくれた、気高い幼馴染。
(ルーク!死んじゃやだよぅ!)
いつも自分をさり気なく励ましてくれた、大人な少女。
(しっかりなさいルーク・・・!)
いつも嘘偽りなく真実を教えてくれる、友人と言ってくれた人。
(ルーク!頑張って!)
いつも自分を見てくれていた、強い瞳を持つ少女。
ルーク
ルーク
ルーク
あぁ、皆が読んでいる。
あぁ・・・・
(戻って来い!『ルーク』!!)
彼が呼んでいる
「うんっ・・・・!」
《頑張って下さいね、ルーク・・・・》
その人物は、優しく慈愛に満ちた瞳でルークに微笑み言った。
やがて朧気になってくる意識を堪え、
ルークはその人物へ感謝を込め、微笑んで見せた。
「ありがとう・・・・
イオン・・・・・」
「!?脈が安定してきました・・・!」
その言葉に仲間達はハッと息を詰める。
「どういうことだ?先ほどまでの事が嘘のように、
すべて急速に回復していくぞ・・・・!!」
驚きを隠せない医者を気にせず、仲間達は安堵の溜息をついた。
アッシュも詰めていた息を深く吐く。
「・・・っ・・・・良かった・・・・・・・・・。」
自分で思っていたもより弱く、震えていた声にアッシュは驚いた。
すると、握り締めていたルークの手がピクリと動く。
ハッとし、顔を見ればきつく閉じられていた瞼がゆるゆると開き、
涙に潤んだ綺麗な翡翠の瞳がアッシュを捕らえた。
「ただ、いま・・・・。」
「あぁ・・・お帰り・・・・・。」
ふにゃりと笑うルークにアッシュも普段見せない微笑を見せた。
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はい中途半端で終わるぅ〜☆(おま・・・!)
なんかありがちネタ。
ルー君アクルシの出産秘話?
イオン様大活躍☆
よくやったイオン様!さすが導師!(え?関係ない?)