むかし、むかし、あるところに

ひとりのわがままな少年がいました。




――人形の少年の物語――





鬱陶しい雨がここ毎日降り続けている。
梅雨の時期にはいったからだ。

雨なのにもかかわらず、仕事は山積みで、ルークはそれに追われていた。


と、そこへ、雨音以外の音――扉がノックされる音がした。


「はい?どうぞ。」


書類にサインをする手を止め、相手に入ってきてもいい意を示す。
キィッと遠慮がちに開かれる扉の向こうには人の姿は見えなかった。
否、視線を少し下げれば、赤い髪が見て取れた。


「どうした、ルーシ?」

そう言い、微笑みかければ、ルーシは にぱっ と顔を輝かせ、
とてとてと小走りにルークの元へと駆け寄った。


「母上、ご本読んで。」


小さな両手に抱えられている本を差し出され、ルークは少し逡巡した。
今取り掛かっている書類は、明日には提出しなければならないもので、
あと少しとはいえ、まだ残っているのだ。

その時、開けっ放しにされた扉の向こうから、タタタッ と駆けてくる足音が聞こえた。


「こら、ルーシ!母上のじゃまをするなと言っただろうが!」

飛び込むように部屋に入ってきたもう一人の赤に、ルーシは唇を尖らせて反抗する。

「だって、ヒマなんだもん。雨ばっかふってて外であそべねーし。」

「だからといってなぜ母上のところにくる。母上はお仕事でいそがしいんだ。」

「だって・・・さいきん、母上と遊んでないもん・・・・」

途端、ルーシは泣きそうな表情になり、細々と言う。
それを見てルークはハッとした。
確かに最近は仕事ばかりで、あまり子供達に構ってやれていなかった。
よく見ればアークもルーシの言葉に困ったような、寂しそうな表情をしている。


俺って、駄目な母親だな。


「だからって・・・!「いいよ」」

尚も言い聞かせようとするアークの言葉を遮り、返事する。
すると二人は驚いたような表情をした。


「仕事は休憩!本、貸してごらん。読んであげるよ。アークもこっちにおいで。」


そう言うとルーシは嬉しそうに本を渡し、ルークの左隣に。
アークは渋々ながらも、どこか嬉しそうな表情でルークの右隣に座った。

本のタイトルを見て、ルークは少し驚いたように目を見開くが、
すぐにページを捲り、本を読み出した。










雨音に混じり、ルークの声が室内に響く。
アークとルーシはルークの語る物語に、静かにじっと聞き入っていた。



「母上、それで?その子はどうしたの??」

ルーシが急かすように聞くとルークは二コリと微笑み、続きを語る。






―やがて少年は自分がお人形だと知ります。



本に書かれているのは、一人の人形の少年の話。
そう、それは自分の話だった。



―少年は自分の命と引き換えに世界を救おうと試みます。
 しかし、少年だけでは力が足りません。

―そんな少年を助けたのはもう一人の《少年》でした。



本に書かれているのはレムの塔での出来事。
いつ、どこでどうやって知ったかは知らないが、
旅の間の出来事が物語りに書かれていた。

多少美化されてたり、捏造された部分はあったけれど。



―そして少年はローレライと死んでしまったもう一人の少年を助けてあげました。

 けれど、少年は力を使い果たし光になって消えてしまいました。


―少年はローレライと共に空の音譜帯で、
 今もこの世界を見守っているのかもしれません。



「はい、おしまい。」

パタンと本を閉じる。
ぐずぐずと鼻をすする音が聞こえて、その方へ向けば、
半泣き状態のルーシが大きな瞳いっぱいに涙を浮かべていた。
アークの方を見れば、涙は浮かべてはいないものの、
どこか堪えるように瞳を潤ませている


「ど、どうしたんだ?」

「ははうぇ・・・その子・・・可哀想・・・・」


そう言われて、二人は物語の少年を悼んでいると知る。
その事にルークはこの目の前で悲しむ二人の子供をとても愛しく思った。


俺のために、悲しんでくれるんだな。



「なあ、アーク、ルーシ。実はな、この物語には続きがあるんだ。」


「えっ?」

「ほんとう?」


「あぁ。」



―もう一人の少年は人形の少年によって生き返りました。

 しかし、もう一人の少年は人形の少年を助けようと思い、
 少年の仲間とともにローレライにお願いをします。


 その時、奇跡が起こり、なんと少年が蘇ったのです。


―少年は人形の少年から人間の少女になりました。

そして少年と少女は、ずっと一緒に仲良く暮らしました・・・・



「はい、これでおしまい。」


ほー・・・と聞き入るアークとルーシに笑いかける。

「良かった、その男の子・・・ちがった、女の子、かな?しあわせになれたんだね!」


「ああ、幸せだよ。」

このような家族に恵まれて、本当に幸せだ。


ふと、静かになったので下をみやれば、二人は仲良く手を繋ぎ眠っていた。
その光景に思わず笑みをこぼし、すぐそこにあるタオルケットをかけてやる。
その時、コンコンとノック音がした。
間を置かずして開かれた扉の向こうには愛しい紅が立っていた。


「なんだ、この光景は。」

少々呆れたように言うが、その目は穏やかだ。

「ん、今、本読んであげてたんだ。」

もっていた本をひらひらと振るとアッシュはそれを取り、パラパラと本を見た。

「この本はなんだ。」

はあ、と溜息をつくアッシュに少し意地悪めいた笑みで笑いかける。

「もちろん、俺達の話。なんか違う所結構あるけどさ。よくできてるじゃん。」


「で、書類の整理はすんだのか。」

「う、実はまだ少し残ってたり・・・・;」

目線を泳がせるルークにアッシュはもう一度溜め息をつくと、
おもむろにルークを抱き上げた。

「あ、アッシュ?」

「仕方がない、書類整理は俺がやってやるよ。」

「え、でもアッシュも仕事・・・・」

「とっくに終わった。・・・・・それに・・・お前、最近あんま寝てねぇだろうが。」

確かにここ最近は仕事詰めでろくに睡眠をとっていなかった。
今でもちょっと眠い。

「だけど・・・」

「いいから休め。」

そうピシャリと言われ、ルークは何もいえなくなった。
仮眠用のベッドにふわりと下ろされる。

ベッドに横たわるだけで、眠気が一気に襲ってきた。

「あ・・・・しゅ・・・」

「この仕事が終わったら、休暇をとってある。皆で、どこかへ出かけよう。」

「うん・・・。」

へにゃりと笑うとルークはそのまま心地よい眠気へと体を預けた。
アッシュは眠るルークの前髪をかきあげ、額にキスをすると、書類の整理にとりかかった。







―少女は母親となり、少年は父親となり、
 二人の子供に恵まれて、今も幸せに暮らしています。








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 あっとがきーん

うーんと、よくわかんない話ですね、はい。
少年から少女になって、なんで疑問を持たないの?
とかとか・・・;;
まあ、子供だから細かい所は気にしないのですよ(爆)
てか、どうやらルクママはED後に
おなごになったみたいですね。(お前が考えたんだろ)













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