「「こんにちはっ!」」


毎日のようにミヤギ道場へ通う俺達。

それは、いずれ上に立つ者として、民を守れるように。
己を高め、自分の身を守るためってのもある、
もちろん、父上母上みたいに強くなりたいってのもある。

けれど、武術始めた本当の理由は・・・・・・






――小さな騎士誕生秘話――






そう、それは俺達が4才の頃だった。


母上と俺達は、ベルケンドに遠征に行っている
父上に会いに行ったんだ。

母上はとても強いお方だ。

途中、遭遇してしまったモンスターを、
臆する事なく、次々と倒していった。

まだまだ武術のぶの字も知らない俺達は、
その剣舞を憧れのまなざしで、遠く離れた木陰から見ていた。



けど、その日は運が悪かった。



魔物の大規模な群れに遭遇してしまったのだ。
もちろん、これも母上の敵じゃなかった。

ただ、その日は俺達という《お荷物》がついていたんだ。
・・・・・こんな言い方したら、両親(特に父上)に怒られるだろうけど。
けど、その時俺は自分の無力さに歯痒く、そう思った。

そして、母上に敵わないと思った魔物は、
潜んでいた俺達に狙いを定めたんだ。


あの時の事は今でも覚えている。


射抜かれるような鋭い眼光。

獲物を食む所を想像したのか、鋭い牙が覗く口からは、だらだらと涎が滴っていた。

そして、身がすくんで動けないほどの殺気。



今は平気だけど、あの頃の俺達には十分だった。




ゥガァァアアッ!!!


『『ぅわああっ!!』』


―ザシュッ・・・・



魔物の雄叫びに、
肉に牙が刺さる音に、
鼻を突く鉄に似た臭い。


もう駄目だと思った。
しかし、いつまでたっても衝撃と痛みは来なくて、恐る恐る目を開いた。




そこに写ったのは、



俺達を庇うように、魔物を背に立つ母上の姿だった。




母上は自身の背に食らいつく魔物に刃を立てると横に凪いだ。

そして俺達の方に向き直り、半ば叫ぶように問いかける。



『大丈夫かっ?!』



『だいじょうぶっ・・・!でもっでもっ!』

『ははうえがっ・・・!!』

情け無い事に、半べそかきだした俺達に、
母上は安心させる用にか、いつもの優しい笑みを浮かべる。


『大丈夫、お前達が無事で良かった・・・・』


どう見ても大丈夫そうでない傷を負っているにもかかわらず、
穏やかな声色で俺達を諭すその姿に、俺達はただ泣きじゃくるしかなかった。


その間にも、母上は血が滲むのをそのままに、次々と魔物をなぎ倒していく。

だけど、失血からか、母上の足が時々ふらついている。



その時遠征に行く前に、父上に言われた言葉を思い出した。





――アークレス、ルーシアス。


――なんでしょう、ちちうえ?
――なぁに?ちちうえ?


――俺がいない間は、お前達がアイツを守れ。


――はいっ!
――うんっ!





父上に、母上を守れって言われたのに・・・・!!
逆に守られるなんて!


こんな事では駄目だ・・・!

こんな事では!!



自分の半身も、そう思ったらしく、二人目を合わせ頷く。
そして近くにあった石と木の棒を持ち、
遂には片膝を付いてしまった母上の前に躍り出た。


『お前達っ・・・?!』

『ははうえに、ちかよるなぁっ!!』

石を魔物に向かって思いっきり投げる


ギャァオオオオォッ!!!


その石は魔物の眼に食い込み、
視界を奪われた獣は激痛にのた打ち回る。


『やった、あたった!』


しかし、嗅覚の良いその魔物は眼を潰されながらも、
怒りのままに、こちらに向かって突進してきた。


『馬鹿っ!逃げろ!!』

母上の焦ったような声。
だけど、俺達は怪我をした母上を置いていくような真似はしなかった。
震える手を叱咤しつつ、木の棒を握る手に力を込める。




『いやだ!ぜったいにげない!!』
『ちちうえと、やくそくしたんだっ!!』




魔物が目と鼻の先にまでやってきた。

そして、その大きな口を開け、飛び掛ってきた。















刹那。













俺達の視界に色鮮やかな『紅』が飛び込んだ。












母上の夕焼けのような朱ではなく、
それは母上が負った傷から流れる鮮血に似ていたけれど、
燃え立つ焔のような紅だった。







『屑がぁっ!!』






怒号と共に、その手から放たれる光の眩しさに、目を瞑る。



光が止み、目を開くと、魔物達の姿は跡形もなく、
目の前には、ベルケンドにいるはずの父の姿があった。



『ちちうえっ!!』


『アーク、ルーシ・・・・・』


『は、ははっ・・・うえっがっ・・・!!』


ぐずぐずと泣きじゃくる俺達の頭を一撫ですると、父上は母上の傍へ膝をついた。


『あはは・・・・アッシュ、ごめん;』

『ったく、気になって来てみれば・・・・』


父上は俺達が来るのを待っていたけど、
嫌な予感がして途中まで迎えに来たらしい。

父上は母上に向かって怒ったような口調で話していたけど、
その目はとても心配そうな目だった。


手際よく母上の手当てをし、
父上は傷に障らないよう、母上を背負った。


『あ、アッシュ!自分で歩けるってば!!』

『ウルセェ、ふらふらしてたヤツがどの口聞いてやがる。』


『ははうえっむりしないでください!』
『おねがいっ・・・・!』


俺達の懇願も聞いて、母上はぐ・・・と唸るとおとなしく父上に体を預けた。


そのあと、すぐにベルケンドについて、母上はお医者さんに診てもらった。
傷も思ったより浅く、父上の応急処置が良かったのか、跡も残らないそうだ。





その夜、宿にて俺達はずっとうな垂れていた。


『ちちうえ・・・・』
『ははうえ・・・・』


『? なんだ?』
『? どうした?』


『『あ、あのっ・・・・ごめんなさいっ!!』』


突然謝る俺達に、父上と母上は驚いたようだった。


『おれたち、ははうえをまもるって・・・』

『ちちうえと、やくそくしたのに・・・』


そう言うと、二人は合点がいったように目を合わせる。

すると父上の手が、ス・・・と俺達の頭へとのびた。
殴られると思ったそれは、予想に反して、不器用に頭を撫でられるだけだった。
キョトンと不思議そうに見上げれば、苦笑いした父上の顔があった。


『よく、頑張ったな。』


父上の言う言葉の意味がわからず、俺達は首をかしげる。
言葉の足りない父上の代わりに母上が口を開いた。

『初めてみる魔物を前に、俺を守るように、庇ってくれたもんな。』

『でも・・・・・』

その先を言う前に母上の人差し指に遮られる。

『子供を守るのは親の務めだろ?』

そう言うとあの優しい笑みを浮かべる。


『『ごめんなさいぃ〜〜・・・・』』


そういうと俺達は母上の腰にしがみつき、(もちろん傷に障らないように)
ずっと、ずっと泣き疲れるまで泣いた。








だから、俺達は強くなる事を決意した。


父上の約束を違えないように。
母上の優しい笑顔を守れるように。


いつか父上や母上みたいに強くなるんだ!










*******************
あ、あとがき・・・だといいな(何ソレ)

双子が武術を始めたわけ秘話。
またの名をマザコン度UP秘話(ぇ
双子ちゃんはルクママ大好き!
アスパパももちろん好きです。
いつかアスパパみたいになりたいと憧れてます。
でもやっぱりママ至上主義(笑)
アーク視点かルーシ視点かは、皆様の好きなようにとって下さってかまいません☆
もうちょいアシュルクしたかったな・・・





おまけ?








『ははうえ!』


『ん?』


『おれたち、ははうえを、んと、きずもの?にしちゃったから!』

『せきにんもって、ははうえを、およめさんにするよ!』



『『!!??』』



このときの父上と母上の表情はすごい印象に残った。





END(笑)







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