4日目
安らぎの場所

昨日ルークから貰ったクッキーは歪な形をしてはいたが、まぁまぁ食べられるものであった。
(本当は意外と美味しかったのだが癪なので正直に言えない。)
律儀な性格のアッシュは、嫌々ながらも貰ったものは貰ったので、
そのお礼、とまではいかないが今日くらいはルークの好きにさせてやろうと思った。
(それでも許容できる範囲でだが。)


そしていつものようにアッシュを見つけ出して嬉しそうに駆け寄ってくるルーク。

「なぁアッシュ、ちょっと時間あるか?」

「なんだ。」

「お前に見せたい所があるんだ!来ないか?」

「あぁ。」

そういって頷くアッシュにルークは驚き目を丸くする。
それをアッシュが睨みつけると、機嫌を損なわぬ内にと思ったのか、
ルークはそれ以上何も言わずに案内を始めた。

街の端にある小さな丘を登るとそこには一本の大きな樹があった。

「アッシュアッシュ、見てみろよ、こっから街を見るとすっげーんだぜ!」

そう言われて街を見下ろすと、それは街を一望できる壮観な景色だった。

賑やかな中心部から離れているので、静かで鳥の囀りと風の音、そして草の擦れ合う音がよく聞こえる。
二人は樹の根元に腰を下ろして街を眺めた。
小高い丘であるため、人が踏みたてる埃の混じらない草の香りの風が心地よい。

「ほらアッシュ。」

そういってルークは包みをアッシュに渡す。

「昼、まだだろ?一緒に食おうぜ!ここで食べるときっと美味いと思って持ってきたんだ。」

にこりと笑ってルークは手に持っているチキンサンドにかぶりつく。
確かに昼食はまだだったので、アッシュは遠慮なく貰う事にした。
包みを開けば同じチキンサンドが出てくる。
ふと、そのチキンサンドをよく見ればレタスの大きさはバラバラだしパンの切り方も少々歪だ。
ルークが咀嚼しながらチラチラとこちらを伺っている気配がする事から、恐らくは昨日のクッキー同様ルークの手作りなのだろう。
小腹もすいてきたし、ルークの言うとおりこの場所で食べると一層美味いだろう。
ルークの視線は少々うっとおしいが、アッシュは何も言わずにチキンサンドを食べ始める。
ルークを見れば最初は、あっ、とした表情をしたが、次第に頬が緩んで締まりのない顔になる。
同じ顔でそんな顔をするなと怒鳴りたくなったが、この場所とチキンサンドに免じて無言で食べた。
それから会話もそこそこに(ほとんど一方的にルークが喋っていたが)二人はこの安らぐ場所で半日を過ごした。






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