最終日
賭けの行方



アルビオールが直ったとギンジから知らせを受けたのは夕方だった。
準備を整え宿を出る。
今日で7日目。
例の約束の最後の日だ。
昨日から顔を見せないあいつはもう諦めたのだろうか。
多分、諦めただろう。
あれだけハッキリと拒絶をした。7歳の子供でもわかる。
なのに何故・・・何故釈然としない。
これが俺の望んだ結果ではなかったのか？

そう思いながらもアッシュは街の外へと出てアルビオールへと乗り込んだ。










部屋のベッドにルークは横たわっていた。
昨日一日中、雨の降る外にいたのだ。予想を裏切らず風邪を引いた。
高熱がルークの体力と思考を奪っていく。
辛いものだがそれでもいいとルークは思った。
ハッキリ拒絶されて、とても悲しかった。この世から消えたくなった。
でもそれはできない。
自分にはやることがまだたくさんあるし、そしてなにより自分の罪がそれを許さない。
死とは一番簡単で、一番楽で、そして一番卑怯な逃げ道だ。

息が苦しい。
窓を見れば外は相変わらず曇っていて暗い。
先ほどジェイドが夕食と薬を持ってきたから、
正確な時間はわからないがおそらく夕方頃だろう。
もうアッシュは行ってしまったのだろうか？
ノエルがアルビオールの修理が終わったと言っていた。
ギンジと一緒に整備してたはずだから、おそらく向こうも修理が終わったのだろう。

思考がぐらぐらとして意識が薄れていく。

あぁ、最後の日が終わってしまう。
おそらく次に目が覚めたらもう次の日なのだろう。
それより果たして次の日が自分にはあるのだろうか・・・

賭けは負けた。
それでも、最後にもう一度だけ。
もう一度だけ言う事を許して下さい。

「アッシュ・・・すき。」

掠れた声で呟いてルークはまた意識を闇におとした。


































８日目
愛してる





「・・・・ん・・・・。」



ふと意識が浮上するのを感じる。
瞼はまだ開かない。
身体もまだ重いが、昨日ほど辛くはなかった。

瞼にまだ光は見えないが、鳥の囀りが聞こえる。
おそらくもうすぐ夜が明けるのだろう。

最後の日を過ぎてしまった。
もう自分はアッシュを諦めなければならない。
自分で決めた事だけど、とても悲しくて涙が出る。



その時、流れた涙を拭う手があった。


まさか人がいるとは思わなくて、泣いたところを見られたルークは恥ずかしくなる。

ティアかジェイドかガイだろうか？
そう思って重い瞼をゆるゆると持ち上げると、そこに見えたのは


紅。




「・・・・・目が覚めたか。」


「・・・・え？・・・あっ・・・しゅ？」


「俺以外に誰に見える。」


「で、でもっ・・・・・っ・！」

慌てて起き上がろうとするが酷い眩暈を覚えまた倒れこんでしまう。

「っ！急に起きるな、まだ寝ていろ。」

倒れこむ前に頭を手で支えてくれて、ゆっくりとベッドにおろされる。
その優しい手つきにも信じられなくてルークはアッシュを見る。
視線がなにを言いたいのか察したのか、アッシュが口を開く。


「アルビオールの修理はこっちも終わった。」

「うん」

「昨日、出発をしようと思った。」

「・・・・うん」

「だが・・・何故か出発する気になれなかった。」

「・・・・なんで？」

「わからない。だが、昨日一昨日とお前に会ってないと思って。」

「え？」

「お前に会わないと、何か物足りなかった。お前の仲間達からお前が倒れたと聞いて、とても落ち着かなかった。」

そう言ってアッシュはルークの手を握る。
アッシュの手は熱いルークの手には冷たくて心地よかった。

「昨日はそれを一日中考えてた。」

アッシュの綺麗な深い緑の目がルークをまっすぐ見つめる。
その目には若干の不安はあるが迷いは無かった。

「俺は・・・多分、賭けに負けたんだろうな。」

そう言って握った手に唇を寄せられる。

「な・・・なんっ・・・で・・・！」

「言った通りだ。俺は賭けに負け、お前は賭けに勝った。」

「っ・・・じゃ、じゃあ・・・・！」




「ルーク、どうやら俺もお前が好きらしい。」




そう言われてもう涙が止まらない。


「っ、おれ、俺もっ・・・！アッシュが好きだ・・・！」


嗚咽混じりながらも一生懸命気持ちを伝えた。
そんなルークをアッシュは抱き寄せる。
ますます涙が溢れるルークだが、喜びの涙だとわかるので辛くはない。


二人はそのまま寄り添いながら朝を迎えた。
天気は快晴だった。




＊　　＊　　＊　　＊　　＊　　＊



一週間（+１）のプチ連載これにて終了です！
ベタな落ちですが書いてる本人は楽しかったです。
なんとか毎日更新できた・・・！
ぶっちゃけると更新忘れそうな時が２、３日ほどありました（爆）
最後まで御覧頂きありがとう御座いました！